2016.03.17 Thursday
ル・ボナーの素材感さまざまな文庫本カバーについて。(CIRCLE2周年記念制作)
ボナーさんの文庫本カバーは、10年ほど前に作っていたすごくシンプルな形を、2014年から15年始めくらいにかけて、復刻という意味合いも込めてシュランケンカーフにて、さまざまなカラーを展開させてもらいました。
CIRCLEでもとっても人気があって、きっとお気に入りの本たちに使ってくださっているお客様も多いはず。
CIRCLEが2周年にてお願いしていたのは、その文庫本カバー。
でも普通にシュランケンカーフで作ってもそれは記念ぽくないので、「今は手に入れられなかったり、普段はやらないような革で作りたい」と昨年ボナーさんにお邪魔していた際に話して、さまざま革を検討していました。
そこで見せていただきながらサンプルをみては、文庫本カバーになったら面白そうなものをピックアップして。
始めは「5種類の革を2色ずつ、10パターン」なんて話していたのですが、そのうちに決めていた1つの革が制作してみると文庫本カバーにはちょっと仕立てるのが難しい皮革だったことがわかり。
結果としては、「4種類の皮革を2色ずつ、8パターン」にて文庫本カバーを作ってくださいました。
かなり面白いラインナップんなったな、と思っています。
贅沢に革を使ってくださったのが、嬉しい。わがままを言ってしまったけれども、とても良い感じに仕上がったと思っています。
色合いも基本的にはほとんど重なることなく、素材感だけでなくカラーの見栄えとしても非常にラインナップに富んだ具合に。
シュランケンカーフはやはり文庫本カバーにはすごく向いている皮革だなともちろん思うけれど、それ以外の皮革でもまた愉しいことはできるな、と強く感じています。
数はあまり多くはできませんでしたけれど、種類が多いですから多くの皆様に楽しんでいただけると思っています。
革ごとに特性が違ってかなりやりづらかったでしょうに、頑張って仕立ててくださったボナーさんに感謝を。
基本的な形、つくりは昨年まで展開していた文庫本カバーと同様です。
大きさも一緒で、一般的な文庫用。
まれに、文庫でもなぜか高さが地味に大きい文庫などがありますので、そういう場合はちょっと入らないものも中にはあると思いますが、基本的なものはほぼ大丈夫。
こちらの端に、文庫本の片方を差し込む。
もう一方の表紙をこちらのベルトの下を通していく。
ちなみに、今回も基本的には裏地なども貼らずに、その革の質感そのままの床面も見える仕様。
そして端っこのこちらは文庫本の表紙を包みつつ、時にはしおり代わりにページの間に差し込んだりしても使える。
こういう感じに基本はなりますよね。
機能的にはいたってシンプルですし、大げさな仕組みはありません。
けれど、それが革で作るカバーの際には端的に使いやすい。
さまざまな形式の文庫本カバーを見ては使って、店主も通ってきていますが、最終的に使いやすいのはごくシンプルなこういう形だな、と感じています。
文庫本をまとうと革がぐるっともちろん本を包むという具合。
手で直接その革に触れつつ楽しめますから、革の質感をダイレクトに味わえます。
ル・ボナー 別製文庫本カバー サフィアンゴート レッド・ブルーグレー ¥7,000+税
それでは、それぞれの種類の革での詳細をご案内です。まず始めは、色鮮やかなレッドと、とても絶妙なブルーグレーの色合いが美しい、サフィアンゴート。
もうすでに今は手に入らない、かつてのドイツ製の上質なゴートレザー。
皮革自体は結構前のものです。主に日本でこのサフィアンゴートをたくさん手に入れることができていたのは今から10年以上は前の話。
ボナーさんはこのタンナーさんが廃業するときに日本にあった在庫をごっそりもらっていたそう。
一枚一枚手でシボをつけられて、独特な表情のあるこの皮革は、薄くとも丈夫でなおかつ発色が良い。
表面がキラキラと光り、サラリと心地よい手触りがある。
サフィアンゴートはその昔ですらとっても高級な皮革だったので、きっと今でももし鞣しを続けることができていたなら、ものすごい高級な皮革の部類になっているはず。
ル・ボナーさんではそれをしっかりと綺麗にストックしていてくださったので、今回は是非にと使わせていただいた。色合いもまた素敵だったこともあって。
レッドは気持ち良いくらいにパキっとレッド。
でも少しだけ朱色っぽいニュアンスがありつつも、ヨーロッパらしい赤。
この光沢感がたまらない。
手揉みでつけられたシボはきめ細やかで美しい。
表面の粒感は柔らかいというよりは、しっかりと粒の手触りが感じられる。
しっかりと強さもあって、美しさの備わった皮革だと思っています。
サフィアンゴートの床面は色がしっかり残る。これもまた綺麗。
表面よりはワントーン色が薄くなって、オレンジっぽい色味に。
そしてこちらが、ブルーグレーなのですがこの色味が絶妙。
青さは確かにあるのですけれど、シックな落ち着きがありグレーの優しさがある。
なかなかこの色味は他で見ることもないな、と思う。
基本、ステッチなどの色味はその本体の雰囲気に合わせて、ボナーさんにお任せして入れてもらっています。
極端に目立つ感じではなくて、溶け込んだり自然に見えるステッチがほとんどです。
しっかり各パーツにも手で念を入れてくれている。
シンプルなつくりだけれど、地味に手がかかるのです。
ブルーグレーの裏側はかなり落ち着いたトーンのグレー。
この渋さも良い。
レッドは使うときはこんな風で……
ブルーグレーはこのように。どちらも素晴らしい質感ですねぇ。
ル・ボナー 別製文庫本カバー クラシックカーフ キャメル・ダークブラウン ¥7,000+税
お次はシックでクラシックな風合いが溢れる革、名前もわかりやすいクラシックカーフ。
ボナーさんがそれはもう昔に、小物などでつかっていた革と同様のベビーバッファロー。
これももう、今はすでに手に入らない。先のサフィアンゴートもこのクラシックカーフも、どちらもタンナーさんは廃業・解散してしまった。
でも、このクラシックカーフはまた、素晴らしい。
文庫本カバーを打診したときに「これ、いいよ!」と真っ先に話にも出て、店主としても「これ、これは絶対!」とすぐに真っ先に決まった。
クラシックカーフは良い具合にキメが細かく、独特なねっとり感というかしっとり感がある。
マットな表情な始めだけれど、ぐぐっとこすっていくと(エイジングしていくと)色のトーンが少し濃くなり、滑らかな光沢感が表面を覆う。
このエイジングの風合いがあまりにも好きだった。
キャメルは淡いキャメル色で、色濃く変わっていくのが非常に楽しみなカラー。
このしっとり感、手にもつとその革のキメの細かさがすごく伝わる。
ボナーさんがかつてこの皮革を好きで使っていたのがとてもよく分かる。
エイジングも素敵で革の表情も良いのですけれど、このクラシックカーフは傷はつきやすい、というよりも見えやすい。
そもそもの皮革の段階ですでに、スレ傷やこまかな跡、色のムラ感などはあったりします。
そのようなムラやこまかなところは、このクラシックカーフの風合いとして楽しんでいただきたいなという。
ただもしそういったこまかなムラ感が気になるようであれば、このクラシックカーフはおすすめしません。
けれどこれは、触ると一目惚れしてしまう魅力がある。
なんだろう、今こういったしっとり感をもったエイジングも愉しめる皮革というのは、そうないと思っている。
床面は薄いキャメルという感じです。
そしてこちらがダークブラウン。キメの細かさは同様で、エイジングの面白さももちろん。
深い茶色が渋くて個人的にとても好き。
でもやっぱりスレ的な傷っぽい跡はどうしても見えます。
画像でキメの細かさがもっと伝わればいいのに、と思う。
磨いていくと驚くくらいにツヤが生まれます。初めのこの表情とはまるで異なるくらいに。
今でもこの皮革が普通にもし手に入るなら、「あんなの作りたい、こんなの作りたい」とイメージしてしまう。
でもそんな革をたくさん手に触れる文庫本カバーにできるという贅沢。
床面もダークブラウンです。
キャメルを手に持つとこう。
ダークブランはこんな感じ。クラシックカーフはどちらも渋い風合い。
ル・ボナー 別製文庫本カバー イタリアンカーフ ワイン・グリーン ¥7,000+税
そして、こちらの雰囲気の良い色合いの皮革はイタリアンカーフ。
これ、クラシックカーフに似たような質感を持っていて、革のキメという意味ではさらに細やかでねっとりしっとり感も強い。
ボナーさんもタンナーがどこだったかは強い記憶がないようだったけれど、「このイタリアンカーフはきっと気持ちいいよ」とおすすめしてくれた。
そうして出来上がったてきたら、確かに独特なねっとり感。これ、良い感じのイタリア皮革に通ずる何かがあるように思う。
色合いもまた良い感じだったのです。
深く艶やかな風合いのあるワイン色。そしてぐっと奥深い味わいの溢れるグリーン。
表面はなんだかしっとりしていて、独特な柔らかさがある。ワイン色の色の深さがまた良い。
クラシックカーフ同様にやはり傷などは見えたり、革のムラ感はあるけれども、それに負けない質感の良さがある。
トラが見えたりもしますし、表面に跡などもある。このあたりはクラシックカーフと同じく、味わい重視で楽しめる方へおすすめ。
こまかなムラが嫌だという方はおすすめしません。
手に持つとなんだか吸い付く感じもある。
床面もワイン色をしていて綺麗です。
こちらがもう一色のグリーン、これまた深く美しい色味です。
かなり濃いめでダークグリーンといっても良いかもしれない。
この感じはキメの細かさが伝わる気がする。すらっとした雰囲気のある革です。
もちろんワインやクラシックカーフ同様に革にムラ感はありますけれど、それでも面白い皮革と思う。
同じイタリアの良い皮革ではもちろんブッテーロがあるけれど、その方向性とはまるで違う風合いと色合い。
どちらかといえばかつてのイタリアの良い皮革、というイメージが強いこのイタリアンカーフ。
床面はややグレーっぽい感じもするグリーンです。
ワインを持つとこんな風で……
グリーンはこのような具合。どちらも素敵すぎる。
ル・ボナー 別製文庫本カバー クリスペルカーフ ブラック・ブルー ¥8,000+税
そして最後の素材は、現代のカーフの最高峰の一つといって良い、クリスペルカーフ。
これはいわば皮革としては現行で定番的なイメージもあろうと思いますが、個人的にはどうしてもこれを文庫本カバーにしたかった。
すごく贅沢な話だけれど、手に持っているとやはり気持ち良い革なのですもの。
ただどうしてもクリスペルカーフだけはあからさまに革の価格が高すぎるので、ちょっとだけ高くなってしまった。ご理解くださいませね。それでも最低限の価格アップにとどめてくれました。
色はクリスペルカーフといえばど真ん中のブラック、そしてもう一つはブルーをチョイスしました。
ブルーは結局クリスペルの定番カラーとして日本には入らないようで、以前に少し入荷した枚数で終わりなのだそう。
もうほとんど革在庫もないし、せっかくだから使っていいよとお言葉をいただいたので。
この色の対比も結果としてとてもよかったと思う。
クリスペルのブルーは独特な青さだった。
青いのだけれど少しダークなトーンもあって、もちろんクリスペルらしい細かな光沢がある。
美しい、とことん美しい皮革だと思う。
クリスペルカーフはやはり今手に入るカーフとしては抜群に素晴らしい。
革は折り曲げるとシワが入ったりすることももちろんあるけれど、クリスペルの質感はそれすらも綺麗。
さらに使っていくと潤いのあるツヤ感に変わるのが面白い。
床面はかなり色が薄い。クローム革らしいクローム革という一面もやっぱりあるのだな、と思う。
そしてブラックは当然のごとく、クリスペルの輝きがドカンと光る。
ため息の出る美しさのある皮革です。
クリスペルカーフで文庫本カバーをと思っていたのはずっとずっと。
そして筆頭は当然ブラックだと感じていた。
使ってものすごくかっこいい一枚だと思います。
ブラックの床面は白い。ところどころ黒さも残るけれど、いわゆるウェットブルーの状態のカーフの色という雰囲気がある。
他の皮革と違って、漉いた状態のクリスペル床面の美しさは少し負けるかもしれないけれど、それもクリスペルの風合いとして感じてもらえたら良いなと思います。
ずらっと、とっても良いラインナップになったなと思います。
いざ出来上がって並ぶと、とっても気持ちいい。2周年でこれができてよかった。
それぞれ、発売はやはり21日(祝)からとなります。
基本的には当日の店舗にてまずは販売をしていき、オンライン等への反映は翌日以降になってまいります。
何卒、ご了承くださいませね。
こういう思い切ったことをするのが、CIRCLEは好きです。
好き勝手やりすぎだと思われるかもしれないけれど、こういう記念的なきっかけとかがないと、一気にいろいろな皮革を製品で見るという機会もそうないはずなので、それがやりたかった。
ぜひ、愉しんでいただけたらと思います。
普段はまず見られない文庫本カバーを仕上げました。
定番のシュランケンカーフも素敵ですきですけれども、違う感覚で味わってみてくださいね。
CIRCLE
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