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2014.10.15 Wednesday

革を漉く(すく)こと、厚みのことについて

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     今日は少し革のお話を。店頭でもお客様と話になったり、巷やウェブ上でも話題になることがありますが、革の厚み、そして革を漉く(すく)ことについて。

     ブライドルレザーやシュランケンカーフのような牛革を始め、コードバンなどの馬革、あるいは水牛や鹿や、様々な皮革に共通したことでもありますが、革は一枚一枚、元は生き物から頂いているものなので、大きさも違えば表情も異なりますし、もちろん厚みも違ってきます。

     製品においては、革はただ厚ければ良いというでもありませんし、かといってただ薄ければ素晴らしいということでもありません。

     分厚い革は目指した薄さになるまで革を漉いて(薄く削ぐような感じです)いきますし、元々薄い革でもパーツによって端だけをさらに薄くしたりなど、様々なことが革製品では行われます。

     今日は、そんな厚みのこと。
     

     冒頭の画像は、ル・ボナーさんのディプロマショルダーのフラップ部分。ディプロマショルダーは多くの革部分をシュランケンカーフの原厚(なめされた元々のままの厚み)で用いられているので、一枚革でもふっくらと厚めで裏側も独特の表情。

     革には様々な厚みがあり、元々のなめされた状態で既に1mmもないものから、ものすごく厚いものでは6mm〜7mmというものもあったりします。
     それは牛や馬などの革の種類だけでなく、部位や年齢などにも左右され、その様々な厚みのものを上手く整理してあげながら縫製することで、革小物やバッグは出来上がります。



     巷でよく聞かれるのは「革は厚く使っていればいるほど、高級で良い革なのだ」というようなこと。時にはちょっと乱暴に、「この製品は、革が厚いからその分高いんだ」なんて言われてしまうことも。

     これは、正直なところ半分はその通りなこともありますし、半分はどこか違和感があるなと思っています。

     先に申し上げました通り、革にはまず、様々な生き物の種類があります。最もメジャーで身近なものはもちろん牛とは思いますが、牛でも水牛がいたり、品種が違うこともあります。また馬や羊、鹿や豚、ましてやクロコダイルなどなどを見て行くと、それぞれが違う生物にも関わらず、もともとの皮(人間でいう皮膚といいますか……)が総て厚いわけがないのです。

     元々の状態で皮が分厚い生物も入れば、始めっから皮が薄い生物もいます。その状態からタンニンやクロームを使って、時間をかけて鞣すことで革は生まれて行くので、ただただ革が厚ければ良いもの、というのはいささか無理のある話。
     (それは、革が硬いか柔らかいかで善し悪しが分かる、なんていうことも似たようなことが言えると思いますが…硬さだけで革の味わいはきっと判断しきれいないと思っています)

     また、仮に同じ牛革において、2mmの厚さで製作をした小物と、1mmの厚さで製作した小物とを比べて、単に厚さの比較だけで2mmも使っているのだから、凄い、となるのもちょっと違うのでは……感じていて。

     お財布やバッグを製作する時、あるいは家具などに用いる時もそうですが、革は相応に薄く漉いていきます。それは意図的に。そうでなければ綺麗に製作が出来ないこともありますし、目指した製品にならないことが多いのです。



     例えば、ペリンガー社のシュランケンカーフは、部位やロットにもよりますが原厚の状態では、2mm以上の厚みがしっかりあります。シュリンク具合によってはしっかり3mm近くなることもあったり。

     ディプロマショルダーのように、裏地などをつけることなく、一枚地で革そのままの味わいを出すようにがっしりと作る場合は、もちろん原厚が面白い。けれど、残心シリーズのようにコンパクトなお財布、あるいは柔らかな質感をより強調した時などは、薄くして上げる方が革の特徴が出たりもする。

     残心シリーズは、革を0.4~0.5mm(もちろん、微妙に誤差が出ることもあります)の厚さまで薄くし、2枚をベタっと綺麗に圧力をかけながら張り合わせた革を用いています。画像でも分かるようにペロンととってもしなやかでありながら、シュランケンカーフらしいふっくら感や、ほどよいしなやかさが表現されています。

     これは、まさに極限まで革を薄くしつつ、革の強い銀面を使って作るkらこそ出来る風合い。日本らしい技術の賜物と思います。

     けれど、仮にこの小物を革の原厚の状態で作った、と考えてみます。きっと厚みという意味では迫力は出るやもしれませんが、小物としてのほどよいしなやかさや、開閉をするときの使いやすさは良くないものになるでしょうし、何より小さく分厚くなるので、見栄えがややモタっとしがちになってしまうことも。



     機能や見栄え、そして強度なども考えながら革は薄くされます。それは、バッグの本体や、ショルダーベルトなどでも同様で。

     分厚すぎるとなかなか柔らかさは出ませんが、薄すぎてしまうと今度は革が伸びやすかったり、強度が心配になったりします。

     ですので、様々なパターンを考えながら、試行錯誤して厚みは調整されます。

     なので、単純に革が厚い・薄いというだけでは革の質や味わいの総ては分からない部分が多くて。



     とはいえ、「じゃあ厚い革だから良いわけではないのか」と言われると、そういうことでもありません。

     シュランケンカーフはいわゆる「子牛」の革になるわけですが、同じカーフでも妙にもともと薄いものもあれば、しっかりとした厚みの革の種類があります。

     さらに、ブライドルレザー(ロウ成分を染み込ませている皮革)や、サドルレザーなどのハードな革に関して言えば、「成牛」の革だったり「水牛」の革だったりもあるので、さらに厚みの幅は広がります。

     そういった面を考えた際に、例えば同じ品質のブライドルレザーを使いたいと感じた時に、もともと4mmくらいのしっかりとした厚みがあるのか、あるいは2mmもいかない厚みなのか、ではやはり分厚い方が良いとも言えることがあります。

     元の厚みがしっかりとある方が、しっかりと油分やロウ成分などが多く中に染み込みますし、様々な製品を作る際に分厚く革を使ったモノも製作出来る。そういう意味では、厚みのある革が良い革、という表現も出来るかと思います。



     現に、Circus of Happinessで用いているブライドルレザーは、原厚はかなり厚いです。今時では珍しくブライドルで3mmくらいは普通にあります。フラップ部分などでは、それをほんの僅か薄く(2.6~2.7mmくらいに)して、ハリとコシがしっかりありながらも、実用性が高く重くなりすぎないようにしています。

     これは、例えば他のブライドルレザーでもともと原厚で2mmもいかない薄口のブライドルレザーになってしまうと、薄い革を厚くすることは出来ないので、そもそもこの形状が出来ないということに。



     逆に、ショルダーストラップ部分は、ほとんど薄くせず(全くではないのですが)、かなり厚い状態でガッシリと作っていたりします。これは長く使って行った後のしなやかさを愉しむためと、ブライドルレザーが本来もつがっちりした風合いを感じてもらうため。

     こういう味わいを出すには、そもそも厚い革でないと成立しないのです。そしてそんな分厚い革は、長い間生育したものでなければ基本的には難しいですし、育てる環境も大切になってくるので、年々分厚い革は少なくなってきている……とも言われます。なので、素敵な風合いを持つ分厚い革は、確かに貴重といえば貴重。

     ですので、厚い革が良い革という認識は、半分の側面ではあっていて、ある半分の側面ではちょっとずれている、というようにCIRCLEは感じる具合なのです。

     厚いゆえに良い革というのは確かに色々と存在しますが、製品になった際に「厚ければとりあえず高級」ということにはならないのです。なんだか、ちょっと複雑ですよね、やっぱり革って(笑)。



     まして、小物やバッグでは革は幾層にも重ねられて、合わせて縫製されることで出来上がることも多いもの。

     お財布では表の革は少し厚めにしながら、中の革は薄く調整していたり、それが総合して全体の厚みに変わっていきます。

     外も中もとにかく分厚くするときっとお財布は使いづらい、かといってどちらも薄くするときっとすぐ壊れてしまう。そういった様々な兼ね合いを考慮して、ブランドごとに目指した形を作っていく。

     細かく、様々なパーツを見て行くことで、「ここは革を厚くしてるから丈夫かな」とか「ここはあえて薄くしているから、きっと使いやすいな」とか、革の厚みはそんな風に考えて頂けると良いのでは、とCIRCLEは考えています。

     単にぱっと分厚い革だから凄い!とか、薄い革だから良くない!とか、そういうことではないと思って。逆に、とにかく薄くなっているから技術的に凄い!というでもないですし、分厚く使っているから技術がない!とかそういうでもないはず。

     総ては、全体のバランスでその製品をどう感じられるか、どう愉しむことが出来るのかが大切なことのように思います。



     革の品質は、そして何より製品となった時の品質は、決して革の厚みが総てではありません。(ボナーさんが以前ベルトにしていた、6mm以上あるタウラスの革なんかは、その厚みに驚かされましたし、すごく魅力的なものでもありましたけれど(笑))

     それぞれのアイテムに沿った厚さを、それぞれが考えて製作する。その理想は勿論、ブランドや作る人間によって異なりますが、革の性質を感じながらそれぞれの思う良い塩梅を考えて行っています。

     強度が大切なのか、味わいが大切なのか、使いやすさが大切か、あるいは見栄えが大切か。もっともっと様々な要素があるとは思いますが、その優先度合いの組み合わせが革製品の個性となって現れるのではと思います。

     CIRCLEではオリジナルのCircus of Happinessや神戸のル・ボナーさんを始め、エキゾチックレザーのFABRICさんや、漆などを交えるACAMALさんなど幾つかの革がありますが、やはりデザインも違えば革も厚みも違い、異なった面白みがあるもの。



     革を綺麗に薄くするのは、実は結構技術のいること。それは革包丁を使って手で薄くパーツを漉く時でも、あるいは大きな機械を用いたりして漉く時でも。

     狙った厚みに出来るだけ均一に、そして肌が荒れすぎないように綺麗に薄くするのは大変。機械がやる場合でも、その刃の調整などは実はものすごく難しい。ちょっと調整が悪いだけで、床面がガタガタになったり、均一にならない。

     革漉き(かわすき)はもはやそれだけで、立派な職人芸の一つ。上手に漉ける革職人さんは、とっても貴重な存在だったりも。

     そんな手間もかかりながら、革製品は一つ一つ出来上がって行きます。革があって、切って、縫って、というだけではないのですよね。細かなところに様々な人が関わってくれる。本当に作り手(製作に関わる多くのみなさま)には、頭が下がります。



     ……と、こうして革を漉くことだったり、あるいは厚みについてご案内することの必要性を問われるとなんともなのですが。

     CIRCLEとしては、パッと見た状態での厚みや薄さだけでなく、出来れば実際にそのモノに触れたり、あるいは様々な角度から見てみたり、見比べてみたりしながら、先入観なくモノを愉しんで頂けたらな、と思うのです。

     そういう意味で、革についても普段はあまり細かく語られないことを、少し彫り上げてご案内はしておきたいなと思い。

     普通は、いちショップがくどくどと言うものではないのかもしれません。けれど、出来れば自分たちの目が届く製品達は、なるべく色々な情報を持って頂きながら愉しんで欲しいな、という現れ。

     革の厚みや品質などには、きっと作り手側でも鞣す側でも、あるいは販売する側でも、それぞれの意見はあるのだとうと思いますが、「最終的には、使って愉しければそれでいい」というがCIRCLEとしては思うところ。(環境なことなどは、別問題で時に気にしていますけれど)

     そんな風に、こまごまいいながらも柔軟に革を愉しめたら、素敵ですよね。長々と、お目汚し失礼致しました、はい。



     CIRCLE
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